皆さん、こんにちは。
久喜市の歯医者「ハートデンタルクリニック」院長の定岡です。
今日、11月8日は「いい歯の日」です。
ついつい毛先の広がった歯ブラシを使用していたり、力をいれすぎていたり・・・。
した方が良いと知ってはいてもデンタルフロスをさぼりがち。
そんな方も、歯磨き・デンタルフロスなどのセルフケアを見直す良い機会にしてくださいね。
セルフケアについては、コラムでも以前取り上げていますので、気になる方はぜひご覧ください。
さて、今回は意図的再植術についてお話ししたいと思います。
意図的再植術とは、歯を一度抜いて口腔外で治療を行い、すぐさま元の位置に戻すという治療方法をいいます。
信じられない方もいらっしゃるかもしれませんが、以前から行われているエビデンスのある治療方法です。
どのような時に意図的再植術を行うか
改めて意図的再植術とは、治療のため戦略的に一度歯を抜いて元の場所に再び戻す方法をいいます。
例えば、歯の根の部分に大きな病巣ができていたり、通常の根の治療では治らないような時に、一度わざと歯を抜いて、細菌感染したところなどを取り除いたり、病巣をきれいにしたりしてから、元の場所に戻します。
歯の状態によっては、必ず成功するわけではないのですが、根の周囲にある歯根膜がきちんと保存されていれば、一度抜いても不思議なことに再度歯は生着してくれます。
どのようなリスクがあるの?
一度歯を抜くわけですから、いろいろなリスクを伴います。
考えられることとして、抜歯時に歯が破折してしまうことや、治療の成功に重要な鍵を握る歯根膜(歯根周囲に付着する組織)を抜歯時に損傷してしまうことが挙げられます。
抜歯時に歯が破折してしまうと、基本的には失敗となり、そのまま抜歯となります。
また、抜歯時に大きく歯根膜を損傷してしまった場合は、再度戻した歯がうまく生着しなかったり、長期的にもたなかったりと、治療自体が失敗してしまうこともあります。
どのような歯に意図的再植術が適応か
意図的再植術は根の治療が成功せず、他の方法さえも成功しなかった場合における最終手段です。
主に以下の場合は意図的再植術の適応症といえます。
①治療器具を到達させるのが困難な場合。
②解剖学的な制約があり他の治療法が行えない場合。
③他の治療法が失敗してしまった場合。
意図的再植術はどの歯にもできるの?
この治療法はどのような歯でもできるわけではありません。
以下の場合は意図的再植術を諦めざるを得ないことがあります。
①根の形が極端に曲がっている。
②根の長さが極端に短い。(歯根周囲に付着している歯根膜面積が少ない)
③2〜3本ある根の場合、離開度が大きい。
④重度の歯周病に罹患している。
⑤そもそも修復治療が困難な場合。
意図的再植術の術式
①局所麻酔
通常の注射麻酔を充分に効かせます。
②切開
歯と歯ぐきの境目の歯周靭帯を切断します。
③抜歯
根の表面に付着する歯根膜を損傷しないように、時間をかけてゆっくり慎重に抜歯を行います。
④歯根端切除
抜歯した歯の根の先(感染している部分)を削って除去します。
⑤逆根管充填
削った根の先に特殊なセメントを詰めます。
⑥再植
根の表面に付着する歯根膜を損傷しないように、慎重に抜歯した元の位置に戻します。
⑦固定
必要に応じて再植歯の固定を行う。
この治療方法は必ず成功が約束されているわけではなく、むしろ治療条件が悪くなった歯の最終手段に用いる方法です。
とはいえ患者さんとしては、なんとしても歯の保存を望んでいるわけですから、失敗した時は落胆せざるを得ません。
担当医師とよく相談して、充分納得してから治療の選択をされることをおすすめします。